【2025年5月】米ドル円が146円台に急落した理由と今後の見通し

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2025年5月、為替市場で大きな動きがありました。それまで148円台後半まで上昇していた米ドル円相場が、突如として146円台へと急落したのです。この動きは多くの投資家や企業に影響を与えています。なぜこのような急激な変動が起きたのでしょうか。

米ドル円相場の急落には複数の要因が絡み合っています。米国と韓国の為替協議や、トランプ政権のドル安誘導への懸念、さらには市場参加者の心理的な動きなど、様々な背景があります。

この記事では、米ドル円が146円台に急落した理由を詳しく解説するとともに、今後の見通しについても分析します。為替相場の動向は私たちの生活や経済活動に大きく影響するため、その背景を理解することは重要です。

目次

米ドル円が146円台に急落した背景

2025年5月に入り、米ドル円相場は大きく変動しました。5月上旬には148円台後半まで上昇していた相場が、わずか数日で146円台まで下落したのです。この急激な変動には、いくつかの重要な背景があります。

米国と韓国の為替協議による影響

米ドル円相場の急落の一因として、米国と韓国の間で行われた為替協議が挙げられます。この協議の内容が市場に伝わると、投資家の間で米国がドル安を誘導しているのではないかという懸念が広がりました。

米国と韓国の為替協議では、通貨の適正価値について議論されたとされています。特に、米国側が韓国ウォンの対ドルレートについて言及したことが、米国の通貨政策に対する市場の見方を変えるきっかけとなりました。この協議の詳細が明らかになると、投資家の間でドル売りの動きが加速し、米ドル円相場にも波及して一時145.61円前後まで下落しました。

協議の内容自体は非公開の部分も多いのですが、市場関係者の間では「米国が自国の貿易赤字削減のために、ドル安を容認する姿勢を示した」という見方が広がりました。こうした見方が、米ドル円相場の下落圧力となったのです。

米国のドル安誘導への懸念

トランプ政権の政策スタンスも、米ドル円相場の急落に影響を与えています。トランプ大統領は就任以来、米国の貿易赤字削減を重要政策の一つとして掲げており、その手段としてドル安誘導を行うのではないかという懸念が市場に存在していました。

特に、トランプ大統領が過去に「ドル高は米国企業の競争力を損なう」と発言していたことから、投資家の間では政権がドル安を望んでいるのではないかという見方が根強くありました。こうした背景から、米韓為替協議のニュースが伝わると、「これはドル安誘導の第一歩ではないか」という憶測が広がり、ドル売りの動きが加速したのです。

さらに、米国と中国の貿易協議の進展に関するニュースも市場に混乱をもたらしました。一方では貿易摩擦緩和への期待からドル買いが進む場面もありましたが、他方では「貿易協議の進展が米国よりも他国に有利に働く可能性がある」という見方も出て、ドルの方向感が定まらない状況となりました。

5月14日の「謎の爆下げ」とは何か

5月14日、市場は突如として大きく動きました。この日、米ドル円相場は短時間のうちに2円近く下落し、多くの市場参加者を驚かせました。市場ではこの動きを「謎の爆下げ」と呼ぶ声もありました。

この急落の直接的なきっかけは、米国と韓国の為替協議に関するニュースでした。しかし、下落の規模があまりにも大きかったため、単純なニュース反応だけでは説明がつかないと考える市場参加者も多くいました。

実際には、この急落の背景には投機筋のポジション調整があったと見られています。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによれば、投機筋は5月上旬の時点で円に対して約17.7万枚の買い越し(ネットロング)ポジションを持っていました。これは非常に大きな規模であり、何らかのきっかけでこうしたポジションの調整が一斉に行われると、市場が大きく動く可能性があったのです。

5月14日の急落は、ニュースをきっかけに、こうした大量のポジション調整が短時間で行われたことで生じた可能性が高いと考えられています。

2025年の円相場の動きを振り返る

2025年に入ってからの円相場は、大きく変動してきました。年初から5月までの動きを振り返ることで、今回の急落の背景をより深く理解することができます。

1月から3月にかけての円高の流れ

2025年の年初、米ドル円相場は1ドル=158円87銭という水準からスタートしました。これは、2024年12月の米雇用統計が市場予想を上回る強い結果となり、米国の利下げ観測が後退したことで、ドル買い・円売りが強まった結果でした。

しかし、1月中旬以降は一転してドル売り・円買いが優勢となり、徐々にドル安・円高の地合いが形成されていきました。3月11日には146円54銭水準にまで円高が進行し、年初から2ヶ月あまりで12円ほどのドル安・円高となりました。

この円高の主な要因としては、日銀の早期利上げ観測の高まりと米景気減速懸念に起因する日米金利差の縮小が挙げられます。また、投機筋による円買いポジションの積み上がりも円高を後押ししました。3月上旬には、投機筋の円ポジションは約13.4万枚の買い越しと、データが取得できる1992年10月以降で過去最大となりました。

4月に入って変化した円高の要因

4月に入ると、円高の流れに変化が見られるようになりました。4月下旬にかけて一時140円台割れまでドル安・円高が進行しましたが、その背景には新たな要因が加わりました。

第一に、トランプ政権による相互関税の公表が米景気悪化への懸念を高めました。第二に、トランプ大統領による中央銀行の独立性を揺るがす発言が市場に動揺を与えました。そして第三に、米政権によるドル安誘導への思惑が強まりました。これらの要因を受けて、投資家はドルから円などへと資金を逃避させる動きを強めたのです。

しかし、4月末には状況が再び変化しました。米政府の対中強硬姿勢の緩和や、トランプ大統領による中央銀行を巡る発言の撤回、日米交渉の結果を受けた円安誘導への思惑の後退などを背景に、米ドル円相場は143円台後半へと反発しました。

5月初旬の円安から再び円高へ

5月に入ると、日銀の金融政策決定会合でハト派的な姿勢が示されたことから、一時145円台後半まで円が下落(ドル高・円安)しました。日銀は4月30日、5月1日の金融政策決定会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.50%程度に据え置くことを決定し、展望レポートでは経済・物価見通しを下方修正しました。

植田和男日銀総裁は記者会見で、不確実性の高さを繰り返し強調するなど、経済・物価の先行きに慎重な姿勢を示しました。これにより、日銀の追加利上げ観測が後退し、円安要因となりました。

さらに、5月8日には米英貿易協定の締結合意や米中貿易協議進展の期待を受けてドル買い戻しが優勢となり、米ドル円相場は145円台を回復しました。5月10~11日の米中閣僚級協議では「著しい進展」があったとされ、週明けのオセアニア市場では146円台に乗せて始まりました。

しかし、その後の米韓為替協議のニュースをきっかけに、再び円高に転じることとなったのです。

米ドル円急落の具体的な理由

米ドル円相場が146円台に急落した背景には、いくつかの具体的な理由があります。これらの要因を詳しく見ていくことで、今回の相場変動の本質をより深く理解することができます。

米国の貿易赤字是正を目的とした政策

米ドル円急落の最も重要な理由の一つは、米国が貿易赤字是正を目的とした政策を進めているという見方が強まったことです。トランプ政権は発足以来、「アメリカ・ファースト」の方針のもと、貿易赤字削減を重要課題として掲げてきました。

米国の貿易赤字是正策には、関税政策と通貨政策の二つの側面があります。関税政策については、米中間で進められている貿易協議で一定の進展が見られました。5月12日に発表された米中の共同声明では、追加関税を相互に115%引き下げる内容が盛り込まれました。この結果、米国の対中関税は145%から30%に、中国の対米関税は125%から10%になることが決まりました。

一方で通貨政策については、米韓為替協議を通じて、米国がドル安を容認する姿勢を示したのではないかという見方が広がりました。貿易赤字を削減するためには、自国通貨安が有利に働くため、米国がドル安を誘導しようとしているのではないかという懸念が市場に広がったのです。

こうした見方が強まったことで、投資家の間でドル売りの動きが加速し、米ドル円相場の急落につながりました。

中国の通貨高誘導の影響

米ドル円急落のもう一つの要因として、中国の通貨政策の変化も挙げられます。米中貿易協議の進展に伴い、中国が人民元高を容認する姿勢を示したことが、間接的に円高にも影響を与えたと考えられています。

中国の10年債利回りは過去最低水準の1.68%にまで低下し、安全資産への逃避が進んでいることが示されています。こうした中国の金融市場の動向も、アジア通貨全体の動きに影響を与え、結果的に円高を後押しした可能性があります。

また、米中貿易協議の進展は、一方では世界経済の先行き不安を和らげる効果がありましたが、他方では「貿易協議の進展が米国よりも他国に有利に働く可能性がある」という見方も出てきました。こうした見方も、ドル売りの一因となったと考えられます。

市場参加者の警戒心の高まり

米ドル円急落の三つ目の要因として、市場参加者の警戒心の高まりが挙げられます。トランプ政権の政策に対する不確実性や、米国経済の先行きに対する懸念から、投資家のリスク回避姿勢が強まったのです。

特に、トランプ大統領の予測困難な発言や政策変更は、市場に大きな影響を与えてきました。過去にも、トランプ大統領のツイートや発言一つで市場が大きく動いた例は数多くあります。こうした経験から、投資家は米政権の動向に対して常に警戒心を持っており、何らかのニュースがあると敏感に反応する傾向があります。

また、米国の関税政策による米景気への影響も懸念材料となっています。相互関税の導入は、短期的には米国経済にマイナスの影響を与える可能性があります。こうした懸念から、投資家は安全資産とされる円への逃避を強めたと考えられます。

市場参加者の警戒心の高まりは、ポジション調整の動きを加速させ、結果的に米ドル円相場の急落につながったのです。

為替市場の全体的な状況

米ドル円相場の急落を理解するためには、為替市場全体の状況を把握することも重要です。投資家の動向や金利差の影響、円の位置づけなど、様々な要素が相場に影響を与えています。

大口投資家の動向

為替市場における大口投資家の動向は、相場の方向性を大きく左右します。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物ポジションのデータを見ると、投機筋の動きが見えてきます。

5月6日時点で、投機筋の円ポジションはドルに対して約17.7万枚の買い越し(ネットロング)となっていました。前週からわずかに減少したものの、依然として大きな規模の円買いポジションが維持されていたことがわかります。

このように大量の円買いポジションが積み上がっている状況では、何らかのきっかけでポジション調整が行われると、相場が大きく動く可能性があります。5月14日の「謎の爆下げ」は、こうしたポジション調整が一斉に行われたことで生じた可能性が高いと考えられています。

大口投資家の動向は、今後の相場の方向性を見極める上でも重要な指標となります。現在の大量の円買いポジションがどのように調整されていくかが、今後の米ドル円相場の動きに大きく影響するでしょう。

米長期金利と日本の金利差の関係

為替相場に大きな影響を与える要素として、日米の金利差も重要です。一般的に、金利差が拡大するとより金利の高い通貨が買われ、金利差が縮小すると金利差要因による通貨高の効果が弱まるとされています。

2025年に入ってからの円高の主な要因の一つは、日米金利差の縮小でした。米国では景気減速懸念から利下げ観測が高まり、一方で日本では物価上昇を背景に日銀の利上げ観測が強まったことで、日米の金利差が縮小する方向に動きました。

しかし、5月に入ると状況が変化しました。日銀の金融政策決定会合でハト派的な姿勢が示され、追加利上げ観測が後退しました。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「利下げを急ぐ必要はない」と強調し、金利差の縮小ペースが鈍化する可能性が出てきました。

こうした金利差の動向も、米ドル円相場の変動に影響を与えています。今後の日米の金融政策の方向性が、為替相場の重要な決定要因となるでしょう。

安全資産としての円の位置づけ

円は伝統的に「安全資産」として位置づけられており、世界経済や金融市場に不安が広がると買われる傾向があります。この「安全資産としての円」の特性も、今回の米ドル円急落の背景の一つとなっています。

トランプ政権の関税政策による世界経済への影響や、米中関係の不安定さなど、様々なリスク要因が存在する中で、投資家は安全資産への逃避を強めました。その結果、円買いの動きが加速したのです。

特に、トランプ政権の予測困難な政策変更や発言は、市場の不確実性を高める要因となっています。こうした不確実性の高まりが、安全資産としての円の需要を増加させ、円高要因となりました。

ただし、安全資産としての円の位置づけは、日本の経済・財政状況や日銀の金融政策によっても影響を受けます。日本の財政赤字の拡大や日銀の金融緩和政策の長期化は、円の安全資産としての魅力を低下させる可能性もあります。今後の日本の経済政策や財政状況の変化にも注目する必要があるでしょう。

今後の米ドル円相場の見通し

米ドル円相場が146円台に急落した今、多くの投資家や企業が気になるのは今後の見通しです。様々な要因を考慮しながら、今後の米ドル円相場の動向を分析してみましょう。

上値と下値の節目となるレート

今後の米ドル円相場を考える上で、まずは技術的な観点から上値と下値の節目となるレートを確認しておきましょう。

上値の節目としては、147.05円が当面の目標となります。この水準を超えてくると、再び148円台を目指す展開となる可能性があります。さらにその先には、5月上旬につけた148円台後半という高値が控えています。

一方、下値の節目としては、143.65円が重要な水準となります。この水準を割り込むと、さらなる円高が進む可能性があります。その場合、次の目標は140円台となるでしょう。

これらの節目となるレートは、市場参加者が注目している水準であり、実際の相場がこれらの水準に近づくと、大きな売買が入る可能性があります。特に、大口投資家のポジション調整が行われる際には、これらの節目が意識されることが多いため、注意が必要です。

米国と中国の貿易協議の影響

今後の米ドル円相場に大きな影響を与える要因の一つが、米国と中国の貿易協議の行方です。5月12日に発表された米中の共同声明では、追加関税の相互引き下げが合意されましたが、その一部は90日間の停止措置にとどまっています。

この90日間は、さらなる協議を進めるための「猶予期間」と位置づけられており、この間の協議の進展具合によっては、再び関税が引き上げられる可能性もあります。つまり、米中貿易協議は依然として不確実性を抱えており、今後の展開次第では市場が大きく動く可能性があるのです。

また、米国は中国だけでなく、日本や欧州、その他の国々とも貿易協議を進めています。これらの協議の行方も、為替市場に大きな影響を与えるでしょう。特に、日本との協議では為替問題が取り上げられる可能性もあり、その場合は直接的に円相場に影響を与えることになります。

米国の貿易政策は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の方針に基づいており、予測が難しい面があります。今後の貿易協議の動向には、十分な注意が必要です。

日銀の金融政策の方向性

今後の米ドル円相場を左右するもう一つの重要な要因が、日銀の金融政策の方向性です。5月の金融政策決定会合では、日銀は政策金利を据え置き、展望レポートでは経済・物価見通しを下方修正しました。

植田和男日銀総裁は、不確実性の高さを強調し、経済・物価の先行きに慎重な姿勢を示しました。こうした日銀のスタンスから、市場では追加利上げの時期が後ずれするとの見方が広がっています。

しかし、日本の物価上昇率は依然として2%前後で推移しており、賃金も上昇傾向にあります。こうした状況が続けば、日銀が追加利上げに踏み切る可能性も十分にあります。特に、円安が進行して輸入物価が上昇すれば、日銀の利上げ圧力が高まる可能性があります。

日銀の金融政策の方向性は、日米金利差を通じて米ドル円相場に大きな影響を与えます。今後の日銀の金融政策の動向、特に追加利上げのタイミングについては、注意深く見守る必要があるでしょう。

まとめ:米ドル円相場の今後に注目すべきポイント

米ドル円相場が146円台に急落した背景には、米国と韓国の為替協議やトランプ政権のドル安誘導への懸念、投機筋のポジション調整など、複数の要因が絡み合っていました。今後の相場を見通す上では、米中貿易協議の行方や日銀の金融政策の方向性が重要なポイントとなります。特に、米国の関税政策や通貨政策の変化には注意が必要です。また、大口投資家のポジション調整の動きも相場に大きな影響を与える可能性があります。為替市場は様々な要因が複雑に絡み合う場であり、今後も予測困難な動きが続く可能性がありますが、基本的な要因を理解しておくことで、相場の変動に対する備えができるでしょう。


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